巻頭言
地域包括ケアシステムにおける「転倒予防」の重要性
渡邊 進
1,2
1医療法人社団寿量会熊本機能病院
2熊本大学医学部医学科
pp.240-241
発行日 2018年4月15日
Published Date 2018/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200827
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転倒予防は,寿命の延伸とともにその重要性を増しています。高齢者の3人に1人は1年間に一度以上の転倒を経験するとされ,転倒による不慮の事故は,窒息に続き第2位であり交通事故を上回っています。転倒・骨折は脳血管障害,認知症,高齢による衰弱に続いて要介護の原因となる部分も多く,長寿を延伸させることが,そのまま健康寿命を延伸させることにはつながりません。単なる長生きではなく,健康寿命を延伸するという点から,転倒・骨折を予防することが極めて重要であります。転倒予防は,地域包括ケアシステムの5つの要素である,医療(転倒・骨折への医療的対応や病棟内転倒予防など),介護(施設内転倒予防など),住まい(住居内転倒予防など),生活支援・介護予防(多面的・包括的な転倒予防介入など),のいずれにも関連しています。
転倒のリスク因子には,本人の特性に関連する内因性リスクと環境などの外因性リスクがあり,内因性リスクとしては,バランス障害,筋力低下,視力障害,薬剤などさまざまなものが知られています。転倒予防に最も有効な介入は運動です。運動はグループでも在宅で個別に指導を行う場合でも有効であり,バランス訓練の要素など複数の訓練要素が含まれているものに効果があります。その他,家屋評価や改修,精神作動薬漸減,包括的なリスク評価に基づいたリスクの修正,などのアプローチで転倒予防効果が報告されています。
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