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はじめに
今回の症例はがん末期患者です。
山井さん(仮名)60歳,男性,診断名 右腎がん,胸椎転移
9年前に右腎がんと診断され,右腎根治的切除術を受けた。その後インターフェロン開始。3年前には胸椎への転移を認め放射線療法を施行した。
ある年末12月24日突然の左下肢脱力あり,徐々に増悪。翌年1月2日には立位困難となり救急搬送された。2月4日一度自宅退院。その後感染症の併発など入退院を繰り返し,最終的には6月30日自宅退院,直後に訪問リハビリの依頼があった。
訪問時意識清明。協力的。コミュニケーションは問題なし。血圧110/78 PR 92整。体温37.0℃ 右利き。握力右16.3kg左14.7kg。残存機能は第5胸椎レベルの対麻痺(不全)。Frankel B,ASIA impairment scale B。両下腿に著明な浮腫あり。特に足部。皮膚はソフト。両側下肢は感覚脱失だが,両側股関節他動時(左>右)痛を訴える。仙骨部に褥瘡の瘢痕あり。車いす座位はリフターを利用。バルーンカテーテル留置。退院前日の6月29日の採血検査WBC 5,200,Hb 7.7 Plt 5.3万,T.P 4.9,ALb 1.5 CRP 16.37。転移は第3/4/5胸椎,左第4肋骨。食欲なし。長時間話すとむせる,咳が出るなどがみられるとのことであった。要介護4。医療保険で訪問看護(インターフェロン注射あり)。週3回,他は介護保険によるサービスで,訪問入浴週2回,車いす等レンタルあり。同居しているのは妻のみ。訪問のリハビリに何を期待するか尋ねると奥様は「立ってくれれば」「両足の筋力を強くしたい」と答えられ,山井さん自身は「できるだけ入院したくない」「家族に迷惑をかけたくない」と話す。よくよく確認すると,「治らない」と言われたが入院が長期になり,どうしても家に帰りたくなり無理矢理退院してきたとのことだった。山井さんは「できれば外へ出てこれまでのように展覧会へ行ったりしたい」「最期まで家で過ごしたい」と希望を述べられた。
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