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はじめに
近年の循環器医療の発展に伴い,心不全患者の生命予後は延びている。さらに超高齢社会を迎え高齢者の心不全患者は増加傾向にあり,約100万人の慢性心不全患者がいると推測されている1)。さらに,脳血管疾患や運動器疾患,呼吸器疾患など心疾患にとどまらずにその他の臓器障害や運動機能,認知機能,精神機能に大きく影響する併存疾患を罹患しており,いわゆる複合疾患を有するケースが増加している。そのため,心機能だけでなく身体・認知・精神機能の低下に伴う日常生活動作(activities of daily living:ADL)や,手段的日常生活動作(instrumental activities of daily living:IADL)の低下を認める。また,社会的背景など患者個々の生活状況により疾病管理が困難となる場合が多く,心不全再発リスクの高い生活を送らざるを得ない状況となる。
急性期病院から在宅へ移行した場合には,在宅での自己管理が重要となるため,退院時の診療情報提供や退院時カンファレンスの実施など地域連携の取り組みが重要であり2),在宅期での継続的な疾病管理を視野に入れた在宅生活の支援を立案する必要がある。
複合疾患を有する高齢心疾患患者の生活支援は,これらの背景により患者の介護や介護者の介護負担を考慮した生活支援が必要となる。つまり,介護保険サービスを利用した居宅介護支援が必要となり,必然的に居宅介護支援スタッフが高齢心不全患者の生活支援にかかわる機会が増加すると思われ,疾病管理を視野に入れた在宅生活の支援が望まれる。
訪問心臓リハビリテーション(以下,訪問心リハ)は,身体・認知・精神機能低下を認める高齢心不全患者に対して身体機能向上やADL・IADLの再獲得を支援するために,実際の住環境に即したADL・IADL訓練や心負荷を考慮した住環境の調整を行うものである。加えて,心不全の再発予防という視点から生活支援計画を立案するためには,疾病管理のための在宅生活をコーディネートできる役割のスタッフが必須であり,訪問心リハはコーディネーターとしての役割を担う必要があると筆者は考えている。
湘南藤沢徳洲会病院(以下,当院)では,急性期から在宅までシームレスな移行を目指し同法人訪問看護ステーションの訪問リハを実施し在宅期の支援を行っている。とりわけ,高齢心不全患者に対して外来心リハのエントリーが困難な場合が多く,身体機能やADL・IADLの向上,疾病管理を目的として心臓リハビリテーション指導士が訪問心リハに携わり在宅生活のコーディネーターとしての役割を担っている。
本稿では,筆者の訪問心リハでかかわった取り組みを紹介していきたい。
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