特集 進化する支援機器(福祉用具)
聴覚障害者の聴覚補償と情報保障のための機器
大沼 直紀
1,2,3
1国立大学法人筑波技術大学
2東京大学先端科学技術研究センター
3日本教育オーディオロジー研究会
pp.581-586
発行日 2015年8月15日
Published Date 2015/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200178
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聴覚補償と情報保障
人の聴力は30歳代から少しずつ低下し始め,60〜70歳代にかけて聴覚の老化がさらに進んでいく1)(図1)。加齢による聞こえにくさは徐々に進行するので本人も気づかないまま対応が遅れてしまう心配がある。超高齢社会にあって,誰もが歳をとり高齢者として生きていくことの覚悟を国民は自らするようになってきた。しかし一方,“耳も歳をとっていく”ということの認識や備えについて日本人はいまだ甘いところがある。
聴覚障害学の領域でよく使用される「障害補償」と「情報保障」の用語は,“ほしょう”の漢字の読みが同じなので混同されがちである。「聴覚補償」(障害の補償)とは,例えばよくフィッティングされた補聴器を活用すること,人工内耳の手術を受け,より良い聴力を得ること,明瞭に話すための発音指導を受けること,口形の動きから意味をとらえる読話力を伸ばすこと,あるいは手話の力を身につけることなど,“主として聴覚障害者が持っている自分自身の障害を軽減したり改善したりすること”を指す。
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