特集 産業衛生と地域保健
公害健康被害補償と労災補償
大島 一良
1
1東京都衛生局医療福祉部
pp.463-468
発行日 1976年7月15日
Published Date 1976/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205216
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はじめに
「緒論」でも述べられているとおり,わが国の経済の急速な拡大と都市化・工業化の進展が国民の所得の上昇および消費生活の向上をもたらしたことは否めない事実であるが,その反面,オイルショックを迎え,低成長期に移行したといわれる現在においても,著しい環境汚染という犠牲を,それが国民になお強い続けている事実も,認めざるを得ない実態であろう,ことに環境中の水質の汚染,大気の汚染は,国民の日常生活に重大な影響を及ぼしたことはもちろん,その健康をも蝕む結果となってしまった.それまでは,工場の内部だけでおさまっている程度であったものが,外部の一般生活環境にも滲み出し,よしんば外部に廃棄され,排出させられても,外部の自然浄化能力を超えない程度であったのが,その能力をはるかに超えて,排出廃棄される結果,急速な環境破壊や健康障害が起こってきた.終末処理については全く考えていなかったのである.その結果,当然のことではあるが,社会問題となり,企業と地域社会との争いとなったのである.その代表的なものが,例の四大公害裁判である.すなわち,水俣病訴訟,四日市公害訴訟,新潟水俣病訴訟およびイタイタイ病訴訟である.
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