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Ⅰ 炎症とは
1 急性炎症と慢性炎症
炎症反応は,生体の防御反応の1つであり,組織や細胞を含む生体が内因性ないし外因性に何らかの刺激を受けた際に生じる.これら刺激は,熱や圧といった物理的なものや,酸といった化学的なものなどさまざまな性質のものを含み,由来も細菌感染や外傷など多岐にわたる.また,これら刺激はほとんどの場合には,生体に何らかの害を起こすいわゆる侵害刺激である.炎症反応は,刺激に呼応した生体防御反応として惹起された後に急速に強度を増し,発赤,疼痛,腫脹,熱感を主要症候として形成される.このような炎症反応を,急性炎症反応と呼称する.急性炎症反応は防御反応である一方で,活性酸素種や蛋白分解酵素の過剰産生などのために組織破壊を生じることにより,さまざまな疾患で発症や増悪過程における急性期病態を形作る.その後,侵害刺激の終息や炎症反応の後に炎症に拮抗する抗炎症経路の誘導などにより,炎症反応は急速にその強度を低下させる.
一方,詳細が明らかとなっていない部分も多いが,炎症が長期間継続し慢性炎症反応を形成する場合がある.急性炎症反応が慢性炎症反応に転換されるためには,炎症が慢性化するための特異的機構が誘導されることが必須である.これには,刺激の長期化,抗炎症経路の抑制,正のフィードバック経路の形成をはじめとする炎症反応の増幅経路の誘導,細胞浸潤や分化による炎症局面構築の変容,獲得免疫の誘導などの複数の機構が含まれる.慢性炎症は,このように単に急性炎症の時間軸で延長したものではなく,質的に異質なものである.また,炎症の程度は低いことが通常であるとともに,種々の細胞種の参加や線維化などの組織構築の変容など急性炎症反応に比しはるかに複雑な反応であり,多くの現象が同時並行的かつ相互作用する反応であると理解されている.慢性炎症は,多くの慢性経過をたどる疾患,例えば癌,耐糖能異常,神経疾患,動脈硬化を含む血管病などに共通の病態形成基盤となっている.
Inflammation is triggered by various intrinsic and extrinsic stimuli as a protective machinery to maintain homeostasis in the human body. Usually, it is magnified in intensity initially and regresses rapidly afterwards; this phenomenon is called acute inflammation. However, it occasionally lasts a long time; this phenomenon is called chronic inflammation. Induction of some specific machineries, i.e., formation of a positive feedback loop, inflammatory cell infiltration, and changes in tissue architecture, is required for the transition to chronic inflammation; this differentiates chronic and acute inflammation in nature. Chronic inflammation is a common pathogenesis of various diseases, including cancer, vascular disease, and stroke. Recent experimental studies have clarified the crucial role of inflammatory responses in the development and progression of hemorrhagic stroke mediated by tissue destruction or some other aspects of diseases. In this review, we summarize the research findings of the role of inflammation in hemorrhagic stroke.
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