脊髄動静脈奇形の神経症状・誤診・予後

Spinal Arteriovenous Fistulas: Neurological Symptoms, Misdiagnosis, and Outcomes

はじめに

　脊髄の虚血や出血をきたす脊髄血管障害は，脳血管障害に比べて頻度が低い．その主たる原因として脊髄動静脈奇形が知られているが，脳における脳動脈瘤や脳動静脈奇形と比較してまれである^12）．

　岡山大学の報告では，2009〜2019年に岡山県で脊髄動静脈奇形と診断された症例の頻度は100万人中1.77人/年であった^5）．日本脳神経外科学会Japan Neurosurgical Databaseの集計では，2019年の全国の脊髄動静脈奇形の治療件数は360件であった^3）．このように脊髄動静脈奇形の診断と治療経験は，施設としても個人としても限られている．画像診断の発展にもかかわらず，発症から診断までの悩病期間は長く，1年以上かかっている^4）．診断の遅れは，臨床転帰の悪化をきたす^10）．

　本稿では，整形外科医や脳神経内科医を対象に，脊髄動静脈奇形のうち最も頻度が高い脊髄硬膜動静脈瘻（arteriovenous fistula：AVF）について，神経症状と病態，画像診断の特徴的な所見と治療予後を解説することを目的とする