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はじめに
脊柱変形への治療概念の理解(target alignmentの確立)17,18),側方経路腰椎椎体間固定(lateral lumbar interbody fusion:LLIF)などによる脊椎固定術の低侵襲化13),脊椎骨切り術の普及19),術中3Dイメージ装置やナビゲーションシステムなど先端的脊椎手術支援機器の発展など脊椎外科領域の革新的進歩のみならず,内科的全身管理技術や骨粗鬆症治療の大きな進歩が,成人脊柱変形の手術治療においても多くのメリットをもたらし,その手術適応は広がり治療成績も向上してきた.しかし,周術期合併症を大きく減少させる報告はなく,成人脊柱変形手術が安全な治療法とはいえず,いまだに発展途上と考える.また,周術期合併症は患者health-related QOL(HRQOL)に大きく影響するだけではなく25),入院期間の延長など医療経済にも影響するため,合併症発生を予防し,術後回復を促進させる方策が必要である11).近年,enhanced recovery after surgery(ERAS),すなわち術後回復に役立つ管理のうちエビデンスがあるものを組み合わせ,さらに迅速な回復を目指したプロトコルを策定し術後合併症を抑え早期の退院や社会復帰を実現する取り組みが広がっている8).手術侵襲が大きく周術期合併症頻度が高い成人脊柱変形においても,ERASプロトコルの策定は重要な課題である.
成人脊柱変形の合併症および対処方法は多岐にわたる.脊椎インプラント関連合併症,手術部位感染,手術侵襲の予測,術前評価は本特集号の各論に詳細に記載されているので参考にされたい.また,深部静脈血栓症の予防は日本整形外科学会の「症候群静脈血栓塞栓症予防ガイドライン」,術後せん妄については日本集中治療医学会の「鎮痛・鎮静・せん妄管理ガイドライン改訂版」を参考にしていただきたい.本稿においては,成人脊柱変形の合併症の包括的な知見とERASプロトコルに必要な知識を簡潔に紹介したい.
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