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はじめに
Dubousset2)は,積年の臨床経験に基づいて,ヒトの立位姿勢を「バランスの鎖(chain of balance)」と表現した.その鎖は,地に立つ足を基盤とし,骨盤(pelvic vertebra)を介して,頭蓋骨(cephalic vertebra)に至る(図 1a).脊柱骨盤アライメントを含めた運動器の現状において,最小限の円錐状の動揺と最小の筋エネルギーで,立位姿勢は意図することなく維持されるという概念であり,「cone of economy」と命名した(図 1b).
1970年代,フランスでは骨盤を含めた立位脊椎全長X線撮影が可能となり,脊柱アライメント研究が大いに進んだ.とりわけ矢状面における腰椎・骨盤・股関節のアライメントに注目が集まった.Dubousset2)は,骨盤を最尾側にある1つの独特な椎骨(pelvic vertebra)と名づけ,同時に下肢との間を連結する骨(intercalary bone)と述べている.
Duval-Beaupèreら3〜5)は立位脊柱全長X線側面像を用いた研究で,立位アライメントやバランスの要となるのが骨盤であること,各個人の骨盤形態は生来決まっており,この形態に応じて脊柱および下肢矢状面アライメントが定まり,安定した立位バランスが実現されると考えた.この骨盤形態を表す特異的パラメータについて研究を進め,1970年代にsacral incidenceというパラメータを発見した.これは後年「pelvic incidence(PI)」として英語論文で発表したものである13).PIは各自固有の値をもち,PI値に応じた腰椎前弯(lumbar lordosis:LL),大きいPIに対して大きいLL(図 2a),小さいPIに対して小さいLL(図 2b)となっており,それぞれのLLに応じて頭側および下肢のアライメントが定まると述べている3).これが脊柱骨盤矢状面アライメントの原則である.
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