特集 Failed back surgery syndromeへのアプローチ—診断と対処法
特集にあたって
原 政人
1
1愛知医科大学病院脊椎脊髄センター
pp.465
発行日 2022年2月21日
Published Date 2022/2/21
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002201671
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今回,「Failed back surgery syndromeへのアプローチー診断と対処法」という特集を組ませていただいた.2009年にも本誌で取り上げられたものであるが,今も解決できているとはいえない.その原因の1つとして,MRIなどの画像診断機器の発達が目覚ましいため,昔ながらの神経診察がおろそかになっている点が挙げられる.神経診察は原因部位を紐解くにはあまりにも重要で,本来なら,画像診断機器は神経学的高位診断を確認するための補助であるべきである.私個人としても,脊椎変性疾患とよく似た症状を示す末梢神経絞扼障害を診断できなかったばかりに,しばらくしてから末梢神経に対する手術を追加した経験が幾度もある.
脊椎変性疾患による神経症状は,ほとんどの症例で手術後改善が得られ,感謝されることが多い.手術に満足されなかった症例を振り返ると,予定手術部位の減圧不足であったと思われる症例,併存していた椎間孔狭窄の処置がなされていなかった,もしくは不十分であった症例,末梢神経絞扼障害が術前から合併,もしくは術後に発生した症例などが考えられた.これらは術前高位診断が正しく,かつ痛みに対する患者側の反応に問題のない症例であれば,確実な手術を行うことによって解決する問題である.経験とともに手術手技による神経症状の改善不良例はほとんどなくなってきたが,成績不良例は依然として存在する.最も厄介なのはL5/Sの椎間孔狭窄である.減圧のみで術後症状の改善は得られるものの,比較的早期に再発をきたし,結局固定手術を行わざるを得なくなることがある.
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