Japanese
English
特集 脊椎・脊髄損傷—診断・治療の最前線と今後の展望
慢性期脊髄損傷への治療戦略—軸索再生阻害因子の克服
Regenerative Medicine against Axonal Regeneration Inhibitors
伊藤 修平
1,2
,
名越 慈人
1
,
中村 雅也
1
Shuhei ITOH
1,2
,
Narihito NAGOSHI
1
,
Masaya NAKAMURA
1
1慶應義塾大学医学部整形外科学教室
2国立病院機構東京医療センター整形外科
1Department of Orthopaedic Surgery, Keio University School of Medicine
キーワード:
脊髄損傷
,
spinal cord injury
,
軸索再生阻害因子
,
axonal regeneration inhibitor
,
Nogo receptor
Keyword:
脊髄損傷
,
spinal cord injury
,
軸索再生阻害因子
,
axonal regeneration inhibitor
,
Nogo receptor
pp.953-959
発行日 2020年10月25日
Published Date 2020/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002201516
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はじめに
脊髄損傷とは,中枢神経である脊髄実質が外傷などによる損傷を契機として損傷部以下の知覚・運動・自律神経系の麻痺を呈する病態である.末梢神経は損傷してもある程度再生するが,中枢神経はほとんど再生しないといわれてきた.
しかし,近年の基礎研究の進歩により,再生不可能と考えられてきた中枢神経系でも,適切な環境が整えば再生することが明らかになってきた2,20).脊髄損傷に対する再生医療の研究も著しく進んでおり,さまざまな治療方法が開発されている.特に,急性期〜亜急性期脊髄損傷に対してはいくつかの薬物療法や細胞移植療法が臨床応用もしくは臨床試験の段階に入っており,実際に治療が開始されているものもある.一方で,慢性期脊髄損傷では損傷部の環境の変化が軸索再生に不利に働き,いまだ有効な治療法がみつかっていない.軸索再生を阻害する要因の1つとして,軸索再生阻害因子の存在が考えられる.
本稿では,慢性期脊髄損傷への治療戦略として,軸索再生阻害因子をターゲットにした治療の現状について概説する.
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