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はじめに
視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO)は,失明や重度の対麻痺に至ることもある重症で治療抵抗性の視神経炎と横断性脊髄炎を特徴とする疾患で,本邦をはじめとしたアジア各国で比較的多くみられる.長年,多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)との異同が議論されてきたが,2004年にNMOに特異的な自己抗体(NMO-IgG)が発見され2),翌年にこれが抗aquaporin-4抗体(抗AQP4抗体)であることが判明し1),この抗体が補体とともにアストロサイトを傷害することが示されるに至り,MSとは異なる疾患であると認識された.従来,NMOではその名の通り視神経炎と脊髄炎が特徴とされてきたが,抗AQP4抗体の発見以降,典型的なNMOだけでなく,視神経炎と脊髄炎のどちらか一方のみに病変を呈する症例や,大脳や間脳,脳幹といった視神経と脊髄以外の部位に病変を呈する症例の中にも抗AQP4抗体陽性例があることが報告されるようになった.その一方,重篤な視神経炎や脊髄炎を呈しながら,抗AQP4抗体が陰性である症例も見出されるようになった.その後の解析の結果,視神経と脊髄を主体とした中枢神経系に重篤な炎症をきたす症例のうち,抗AQP4抗体が陽性となるのは約75%と報告されている8).そのため今日では,高度な視神経炎や脊髄炎などNMOに合致する臨床所見が認められる症例は,抗AQP4抗体の有無にかかわらず,視神経脊髄炎関連疾患(NMO spectrum disorder:NMOSD)という疾患概念に包括されている.つまりNMOSDは,抗AQP4抗体陽性NMOSDと抗AQP4抗体陰性NMOSDの2群に大別される.なお,抗AQP4抗体陰性NMOSDの一部ではmyelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)に対する自己抗体(抗MOG抗体)が検出されることがあり,今後この抗MOG抗体関連疾患が,MSや抗AQP4抗体陽性NMOSDとは別の疾患概念として確立される可能性がある.
本稿では,NMOSDの臨床像と疾患概念について抗AQP4抗体を交えながら述べ,その診断基準について概説する.
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