Japanese
English
特集 心因性疾患(変換症/転換性障害;ヒステリー)の現在
変換症の概念とその変遷
The Concept of Conversion Disorder and its Devolopment
野間 俊一
1,2
Shunichi NOMA
1,2
1嵯峨さくら病院
2京都大学
1Saga-sakura Hospital
キーワード:
変換症
,
conversion disorder
,
ヒステリー
,
hysteria
,
解離体験尺度
,
dissociative experiences scale
Keyword:
変換症
,
conversion disorder
,
ヒステリー
,
hysteria
,
解離体験尺度
,
dissociative experiences scale
pp.178-182
発行日 2020年3月25日
Published Date 2020/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002201324
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変換症とは
「変換症」とは,身体医学的には説明困難で,おそらくは心因が関与している,感覚運動の障害のことを指す.「変換症」という名称は近年誕生したものであり,精神科以外の専門の人たちには耳馴染みがないかもしれないが,この疾患概念そのものは以前から存在する.
英語表記は「conversion disorder」であり,もともとは「転換性障害」と日本語に訳されてきた.心理的な葛藤が身体症状に「転換」される,と考えたのである.ただ,「転換」という語は,脳波異常を示す疾患である「epilepsy」の「癲癇」と音が同じ「てんかん」であるため紛らわしい.患者がけいれんを起こした場合,それが脳の病気としての「癲癇」なのか,それとも心理的に生じた「転換」症状なのか,という二者の鑑別が治療上きわめて重要であるにもかかわらず,両方の読みが同じために臨床の現場はいつも混乱してきた.他方では,「障害」という表記は差別的で誤解を招きやすいという理由から,近年,わが国の精神医学界では,「障害」をできるだけ「症」に置き換えようという動きがある.その結果,「転換」は「変換」へ,「障害」は「症」へと書き直されて,「変換症」という言葉が誕生することになった.
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