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はじめに
成人脊柱変形(adult spinal deformity:ASD)に対する矯正固定術の目的は,不良脊柱アライメントを矯正し良好な脊柱バランスを獲得することである.ASDの脊柱は骨粗鬆症による骨脆弱性や変性変化による脊柱可撓性の低下を呈する.矯正固定術を行う際には,spinal instrumentationにかかる負担をできる限り最小限にする必要があるために,変形脊柱に可撓性を与える必要がある.ASDでは前方(変性椎間板や骨棘)から後方(変性した椎間関節)までのthree columnでの解離が必要となる.骨性の変形があれば骨切り(3 column osteotomy:3CO)が必要であるが,椎間板変性が主たる病因であれば椎体間解離(intervertebral release:IVR)の適応となる.成人特発性腰椎側弯症(adult idiopathic lumbar scoliosis:AdLS),つまり思春期腰椎特発性側弯症(adolescent idiopathic scoliosis:AIS)Lenke分類type 5Cの遺残変形では高度な3次元変形を呈するが,多くの場合椎体の変形は認めないため多椎間IVRのよい適応と考える.われわれは,AdLSでは加齢とともに側弯が進行し回旋変形が増強することで胸腰椎後弯が悪化し,腰椎前弯減少・代償性骨盤後傾が生じ,代償機構が破綻するとsagittal imbalanceに至ることを報告した1).また,AdLSでは頂椎付近の椎間が骨棘で自然癒合している場合が多い.AdLSに対する矯正固定術の最も重要な点は,この頂椎付近の徹底的な解離,つまりIVRを行うことにある.PLIFは腰椎変性疾患に対して広く適応されてきた術式であるため,馴染みのある手技であるが,AdLSに行う際には両側の椎間関節を切除し,椎間板を外側まで十分解離する必要がある.また,前述したように骨性癒合がある場合には,椎間板を含めて完全に解離することが重要となる.このPLIFによるIVRを多椎間に行った後,temporary rodを用いたrod rotation maneuverやcantilever maneuverを用いた矯正を行う.本稿では,本術式(multiple PLIF法)のpitfallを紹介させていただく.
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