書評
再生医療とリハビリテーション
名越 慈人
1
1慶應義塾大学医学部整形外科
pp.671
発行日 2018年7月25日
Published Date 2018/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200920
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基礎研究から臨床応用へ—.近年の細胞生物学の急速な発展により,長い人類の歴史の中で不可能と考えられていた再生医療がついに現実のものになりつつある.しかし,一口で“再生”といっても,その手法や評価方法はターゲットとする成体組織によってさまざまである.本書は,わが国における各分野のトップランナーが,これまでの研究成果をわかりやすく解説し,臨床化へ向けた取り組み,さらにはリハビリテーションの有用性について詳細に記載している.神経や軟骨,網膜や心臓といった,本来ならば再生が困難と考えられる重要組織について,再生医療の確立へ向けた現状と課題をコンパクトにまとめており,医療従事者や研究者のみならず,この領域に興味のある一般の方々にも是非ご一読いただきたい書物である.
再生医療における主役は,何といっても幹細胞である.幹細胞は種々の細胞を生み出す多能性をもち,さらに自身が増殖する自己複製能も有している.幹細胞は,成体組織に存在する体性幹細胞,受精卵から作製する胚性幹細胞(ES細胞),そして初期化因子を導入して体細胞を若返らせる人工多能性幹細胞(iPS細胞)の3つに分けられる.第1章では,これらの細胞の樹立や特性について基本的な内容とともに解説されている.特筆すべきは細胞工学に関する内容で,いかに安全で機能的な細胞を大量に作製し患者さんのもとへ届けるか,そのプロセスについて詳しく述べられている.もはや再生医療は,単一施設で推進できるほどの簡単なものではなく,産学連携による社会実装を目指した一大プロジェクトといえよう.
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