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はじめに
近年,側方進入腰椎椎体間固定術(lateral lumbar interbody fusion:LLIF)の術式として,extreme lateral interbody fusion(XLIF),oblique lateral interbody fusion(OLIF)が相次いで本邦に導入された.LLIFはいずれの手法も特殊な挿入器具を用いることにより小皮切から椎体間への到達と術野の維持が可能であることが特徴であり,それに加えて接地面積の大きい側方からの椎体間ケージを挿入することによる大きな固定力と矯正力17,18),間接除圧効果が評価され3,22,23),急速な広まりをみせている.
それに伴い,側方進入前方固定による特有の合併症も少しずつ明らかになりつつある.XLIFは完全側臥位で真横から大腰筋を分割してアプローチする方法であり,OLIFはやや斜め前方から大腰筋の前方を通過して大腰筋を温存しつつ椎体間に達する方法である(図1).このため,両術式はその進入路の違いから合併症の現れ方にも若干の違いがある.両者の共通の合併症として,椎体終板損傷(ケージ沈下を含む),術後大腿前面部のしびれと筋力低下,分節動脈損傷があり,XLIFに頻度の高いものとして神経損傷や腸管損傷,逆にOLIFに頻度の高いものとして尿管損傷や腹膜損傷が報告されてきた1,4,9,15,16,20).これらの報告の中で,日本脊椎脊髄病学会(JSSR)が主導して2017年に藤林らがまとめたLLIF合併症の全国調査4)は,XLIFとOLIFの合併症を比較した初めての大規模調査である.LLIF 2,998例(XLIF 1,995例,OLIF 1,003例)を対象にしており,後ろ向き研究ではあるもののアンケートの回収率が86.1%と高く,2013年からの2年間における国内のLLIF合併症の現状を適切に示していると考えられる.この中でLLIFの合併症発生率は18.0%(XLIF 14.3%,OLIF 18.7%)であり,感覚神経障害と大腰筋筋力低下がXLIFに多く,腹膜損傷と尿管損傷がOLIFに比較的多いと報告されている.
本稿では,このJSSRのLLIF合併症調査に加えて,OLIFについては千葉県下155例の合併症調査1),Mehrenらの812例の合併症調査15)とPhanらの合併症報告についてのレビュー20)を,XLIFについてはJosephらの4,260例の報告9)をそれぞれ参照・比較対象として,LLIFの合併症の傾向を検討する.千葉県下の合併症調査は千葉大学医学部附属病院および県内11関連病院によるもので,県下のOLIF手術合併症の95%以上を網羅している.Mehrenらの報告は症例数の多い単一施設によるものであり,系統立った項目について詳細が述べられていることから,後ろ向き研究であるが逸脱症例も少ないものと思われる.Phanらのレビューは,16論文をまとめたOLIF合併症についての数少ないメタアナリシスの1つである.一方,XLIFについては大規模調査やレビューが散見される7,24)が,それぞれの報告で合併症の概念や調査時期・項目の違いがあるため一概に比較しがたく,本稿ではLLIFで最大の問題と考えられる神経障害の項目が充実している点に注目してJosephらのレビューを引用した.これらの調査報告を供覧することで,LLIF合併症の概観がつかめるものと思われる(表1).それぞれの報告で合併症の概念や調査時期,調査項目の違いはあるが,可能な限り原文のまま列挙した.総じて発生頻度をみると,合併症全体の発生率は3.7〜48.5%で,神経障害(1.1〜21.7%),血管障害(0.4〜3.9%),椎体損傷(2.8〜22.3%)が上位を占めており,これらの発生率の高い合併症を中心に以下に詳細を述べる.
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