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はじめに
平山病(若年性一側上肢筋萎縮症)は,思春期に発症し,一側上肢の筋萎縮・脱力を主徴とする疾患であり,臨床症状は数年間進行した後に停止性となる2,3).本症の病態機序として,頸部前屈時に硬膜後壁が前方に移動することにより頸髄の圧迫をきたし,前角の運動ニューロン障害がもたらされることが推定されている4,5,11).本症の病態を端的に述べると,思春期の身長が比較的急速に伸びる時期において脊椎の発達が脊髄および硬膜の発達に先行する結果として,脊髄・硬膜が上下に牽引された状態になっていると考えると理解しやすい.すなわち,牽引状態にある脊髄(特に頸髄下部)は頸部前屈の際に前方に移動することになる.頸部前屈時には第5頸椎と第6頸椎の部位で椎体の位置変化が優位に起こるために,脊髄・硬膜は前方に押し付けられる.C5-6椎体間部は脊髄髄節ではC7付近に相当するが,C7髄節レベルでの圧迫はおそらく前脊髄動脈の血流が下行性であるためにC7とともにC8髄節における虚血が生じることが推定される.したがって,平山病はC7 ・C8髄節の脊髄前角ニューロンの障害によって特徴づけられる.
図1に平山病症例の頸部前屈時のMRI所見を示す.頸部正中位の下部頸髄T2強調画像では前角に高信号が認められ,おそらく前角ニューロンの脱落とグリオーシスを反映していると思われる.頸部前屈位をとると,脊髄は硬膜後壁とともに前方の椎体に押し付けられて扁平化すると同時に,硬膜後方に静脈叢のうっ滞による高信号域が認められる.これらの変化は矢状断においても明確にとらえられる.脊髄の萎縮はC6椎体レベルで最も強く,C7-8髄節に相当すると思われる4,5,11).この病態によって,平山病における小手筋萎縮のパターンをうまく説明することができる.
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