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首下がり症候群(dropped head syndrome:DHS)の発生頻度は低いが,通常の頸椎後弯症と異なり,首下がり状態を自動的には矯正できない,あるいは矯正しても維持できないのが特徴である.DHSは種々の神経筋疾患に起因して生じるが,その定義は明確でない.本特集では広義に解釈し,さまざまな頸椎疾患に起因する首下がり状態も含めて扱う.DHSの治療は困難なことが多いが,起因疾患によっては薬物治療,リハビリテーションが奏効する.また,頸椎instrumentation手術の進歩により,原疾患によっては矯正手術の良好な結果が期待できるようになった.
東京医科大学整形外科の遠藤健司先生には,DHSの発生メカニズム,病態と分類,保存治療と手術治療などにつき解説していただいた.文中,DHSの形態分類と手術治療戦略に関して重要なポイントが提唱されている.自治医大ステーション・ブレインクリニックの藤本健一先生にはパーキンソン病によるDHSにつき解説していただいた.パーキンソン病とパーキンソン症状,パーキンソン関連疾患に伴う異常姿勢の1つとしての首下がり症状などにつき詳しく述べられている.特にパーキンソン病治療薬に基づく姿勢異常の全国的疫学調査結果は興味深い.川崎医科大学神経内科の黒川勝己先生にはミオパチーおよび神経筋接合部疾患によるDHSにつき述べていただいた.炎症性,非炎症性,代謝性ミオパチーのほか,放射線や薬剤によるミオパチーに起因するDHSについても触れられている.また,DHSの診察手順についても述べられている.福島県立医科大学会津医療センター整形外科の白土 修先生にはDHSのリハビリテーションについて解説していただいた.DHSに対するリハビリテーションのプログラムと実際について述べ,基礎疾患に対する内科的コントロール,下肢関節の拘縮除去などの重要性が強調されている.頸椎instrumentationと骨切り術の発展により,DHSの手術治療は大きく進歩している.筆者はDHSの手術治療の実際,変形形態による手術戦略選択の重要性につき述べた.
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