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はじめに
頸椎には手,肘のように高度な運動性が必要とされるのに対し,腰椎には股,膝関節のように高度な支持性が必要とされる.頸椎は頭部の支持と高度な運動という2つの機能が必要とされるため,dynamic stabilizerが必須の器官である.このdynamic stabilizerとして主要な役割を担うのが頸椎の筋群である11).
この筋群の中でも,頸椎の深層伸筋である頸半棘筋と多裂筋などは頸椎伸展運動のレバーアームとなる棘突起に付着し,extension unitを形成する.Extension unitとは,頸椎運動の力源であると同時に,dynamic stabilizerとしての役割を併せもつ最小単位である17).
頸椎椎弓形成術をはじめとする従来の頸椎後方手術では,これらの伸筋群を棘突起から切離して進入するため,extension unitの機能が大きく損なわれていた.このため,しばしば頑固な項背部痛,頸椎アライメント異常,頸椎可動域の減少によるADL障害といった問題が生じている7,8).さらに,従来の頸椎後方固定術では,特に椎弓根スクリュー挿入時に広範な筋切除を必要とするケースが多く,このため術後筋萎縮や頸部痛に悩まされる患者も多い.
非連続的椎弓切除術(skip laminectomy)は,従来の頸椎椎弓形成術による画一的で広範囲な連続除圧によるextension unitの損傷を最小限にするために考案された.Skip laminectomyの概念はその後,選択的椎弓切除術へと発展していった12).
また,近年では筋温存型選択的椎弓切除術において,椎弓切除幅を制限し筋肉の外側展開量を低減することに留意している5).ファセット背側部の関節包や多裂筋の起始部を温存することが,術後頸部痛の軽減とアライメント異常の予防に有利であると考えている.
頸椎後方筋群を温存したアプローチを頸椎後方固定術に応用することで,以下の利点がある.①血流豊富な筋肉が温存されれば,死腔形成が抑制され,感染の予防に有利である.②筋-骨付着部が温存されるため,移植母床への血流が維持され,後方固定術では骨癒合が得られやすい3,4).
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