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遡ること34年前,研修医2年目として地方病院で1年間の研修を受けた頃の経験です.ある患者を介し,つらく苦い思い出と同時に医師として悩める患者に対して常に真摯に取り組むべき教訓を教わりました.
当時,MRIはもちろんありませんでしたし,全身用CTが大学病院にやっと導入されるかどうかの時代で,現在ならどこの地方施設でも設置されているような画像装置が当時はありませんでした.しかし,研修病院では外傷に始まり,種々の慢性疾患も含め四肢関節,脊椎など一般的な整形外科疾患を広範囲にわたり基本的に研修できました.現在,日本専門医機構による新たな研修専門教育システムの再構築が計画されていますが,まさに30年以上前にすでに北海道大学関連の研修病院では効率のよい研修指導がなされていたと考えます.研修病院では,整形外科疾患の補助診断法として関節造影や脊髄造影などは先輩の監督指導のもとに行われていました.研修当初は外来で関節注射やギプス巻きなども指導を受けながら行っていましたが,自分一人だけで新患をみることはありませんでした.しかし,研修もあと2カ月で終了になる頃には,1週間に1回だけ,先輩医師の診察前に新患をみる機会を与えられていました.腰痛と坐骨神経痛を主訴とする30歳前後の男性患者が外来を受診されました.他院での外来の治療でも痛みが取れないとのことで入院治療を勧められての受診でした.自分が主治医となり,問診の再聴取,所見取り直しに始まり,入院による牽引治療や仙骨裂孔からの硬膜外ブロックなどの保存治療を施行しましたが改善傾向がないため,脊髄造影検査(当時は油性造影剤マイオジールが使用されており,検査後,再度穿刺して造影剤除去をしていましたので,検査後の頭痛はかなりの頻度で発生したと記憶しています)を施行することとなりました.入院当初の所見は,新米の研修医が診察してもラセーグ徴候もはっきり存在し,明らかなL5神経根障害でL4/5レベルでの障害を強く疑いました.しかし,想像していた結果とまったく違って,脊髄造影検査では胸腰椎レベルも含めて腰椎レベルには圧迫病変は微塵もありませんでした.
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