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はじめに
術後創部感染(surgical site infection:SSI)は,検知と対応が遅れると治癒させることが甚だ困難となる.脊椎手術におけるSSI発生率は0.4〜4.3%といわれてきたが7〜9),2011年に行われた全国調査によると,すべての脊椎手術の深部感染発生率が1.1%であり,instrumentation手術はさらに高率で,SSI発生率は減少しているとはいえない4).それゆえ,SSIは予防の努力が第一であるが,同時に早期に検知して対応することも最重要課題である.従来,SSIのスクリーニングにはC反応性タンパク(C-reactive protein:CRP)が最も有用であると報告されている10,12,15).脊椎手術における術後CRPは,術後2〜3日目に最高値を示し,術後5〜14日で正常化したという報告15)が最初であるが,術後14日目でも半数以上は正常値には復さなかったという報告1,3,5,10,13)もある.SRL検査項目レファレンスによると,CRPは「外傷や手術後は,48時間をピークに上昇し約5日でほぼ正常範囲に復するといわれている.CRPの高値がさらに持続する場合は,感染症の併発を考慮しなければならない」と説明されている.しかし,脊椎手術では感染がなくてもCRP値が1〜2週にわたりいわゆる正常範囲に復さないことはよく経験することであり,CRPが高値であるからといってSSIと即断することはできない.CRPがSSIの診断意義を示すのは,いったん低下した値が術後7〜14日で再上昇する場合である10,11,13).換言すれば,CRP値は経時的相対評価が重要視されるのみで,術後の基準値は認識されていない.術後3〜4日目のCRPがいくら高値であってもSSIを積極的に疑う根拠とはならず,さらに術後7日目の値が術後3日目より低下していたとしても低下率がわずかであればその解釈は困難である.血液検査を毎日行えば術後3日以降の詳細な変化を把握できるが,スクリーニング検査としては現実的ではない.そこで,CRP値について経時的変化のみで評価するのではなく,術後の基準値を設定することができれば早期のSSI検知に役立つと考えた.本稿では当施設の取り組みを紹介し,その結果を報告する.
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