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2023年(令和5年)6月29日〜7月2日の4日間にわたり,福岡国際会議場,福岡サンパレス,福岡国際センターにて第60回リハビリテーション医学会学術集会が開催された.今年は3,000名を超える現地参加に恵まれ,あいにくの悪天候の中でも,COVID-19パンデミック以前の学会を思わせるような盛り上がりも感じることができた.また,昨年度同様にオンデマンド配信期間(2023年7月18日〜8月28日)とその内容が潤沢に担保され,学びの機会が以前に比べてオープンになっているのも大変ありがたかった.オンデマンド配信期間中には,講演に対して音声やテキストでコメントを入れることができるプラットフォームが導入され,場所や時間にあまり依存しない参加型の学習の機会が提供されていた.
今回の学術集会テーマは,「Science[科学・医学]とArt[現場]をつなぐ〜これまでの25年とこれからの25年〜」であった.伝統あるリハビリテーション医学会学術集会の歴史を振り返り,これからの道筋を構想できるよう多種多様な医療テーマが用意されており,OTにとっても大変興味深いコンテンツが多く含まれていたように思う.その中で個人的に印象に残ったプログラムのひとつは,McGill UniversityのNancy E. Mayo教授の海外招待講演「Patient Reported Outcomes(PROs)in Rehabilitation:Why, What, and When?」であった.彼女は冒頭に,絶対温度目盛り(K)の必要性を説いた物理学者ウィリアム・トムソン(ケルビン卿)の言葉(To measure is to know. If you cannot measure it, you cannot improve it.)を引用して話を進め,われわれがimprove(改善)しなくはいけない対象として,PROs(患者報告アウトカム)をまず強く打ち出していた.その後,self-reported outcomes(SROs:自己報告アウトカム)との違い等を説明するなかで,PROsの重要性をより明確にする流れは,OTである私にとって,かなり背中を押される思いであった.それと同時に,時に治療対象概念を明確にしないまま,臨床実践を優先してしまう現場を改善することに対してのエールを感じさせる,すばらしい講演であった.
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