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はじめに
本邦における糖尿病人口はすでに1,000万人を超え,さらに増加中である.糖尿病患者の約2%に足潰瘍が存在することから類推すれば,糖尿病で足部に傷を有する人は,少なくとも20万人はいると推察される.また2022年度(令和4年度)の診療報酬改定にて,「運動器リハビリテーション料」の慢性期疾患に糖尿病足病変が追記され,さらに多くの足病変患者への介入が可能となった.下肢切断患者というと,PTの介入は多いが,OTの介入は少ないという現状がある.しかし,糖尿病患者のAlzheimer病のリスクは1.46倍,血管性認知症のリスクは2.48倍と高くなり,ADL,IADLともに障害されやすくなるといわれている1,2).これだけではなく,糖尿病患者は加齢に伴い,筋肉量・筋力・身体機能が大幅に低下するといわれており,神経障害による上肢機能障害が出現していることも多い.また,透析患者の約4割は糖尿病性腎症が原疾患であり,透析により介入時間の制約を受けることもある.これらのことからも,糖尿病足病変に対してOTの積極的な介入が必要である.
大分岡病院創傷ケアセンター(以下,当院)では,大分県内外から足病変患者を受け入れており,医師をはじめ,多くの専門職が積極的な介入を行っている.リハの役割として,身体機能・歩行能力の維持や,安静度に応じた運動療法の提供による廃用症候群の予防,ADLの維持等を担っているが,その中でのOTの役割は,認知・精神機能やADL,IADL,上肢機能の評価・機能訓練に加え,視機能や家屋環境の把握・調整,福祉用具の選定,再発予防に向けた疾病教育の実施等,多岐にわたる.また,経済的困窮や家族・地域とのつながりの希薄化等の生活背景にも問題を抱えている患者が多いため,退院後の生活を見据えて,多職種と連携のもと,早期より積極的な介入を実践している.以上を踏まえて,当院のOT介入の実践について紹介する.
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