増刊号 急性期における疾患別作業療法
第3章 急性期の運動器疾患の作業療法
7 腫瘍による上肢切断と作業療法—骨・軟部腫瘍(希少がん)の事例から
櫻井 卓郎
1
Takuro Sakurai
1
1国立がん研究センター中央病院
pp.896-901
発行日 2023年7月20日
Published Date 2023/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203474
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はじめに
がんで上肢切断に至る事例は,われわれOTだけでなく,他のリハ職でも知る機会が極めて少ないと思われる.がんリハの教育でも触れられることはなく,希であることは事実である.上肢切断に至る患者の多くは原発の骨・軟部腫瘍の患者である.骨・軟部腫瘍の発生頻度は極めて少なく,希少がんに分類される.治療は,がん薬物療法,手術,放射線治療であるが,2012〜2016年(平成24〜28年)にかけて軟部肉腫に対する3種類の治療薬が承認され,治療成績が蓄積されており1),薬物療法の発展により患肢温存できるケースが飛躍的に増加している.しかし,一定数切断(離断)するケースがあることも事実である.
全国に骨・軟部腫瘍の治療を行う施設があり,がん情報サイト2)で公開されている.そうした施設のOTから実践状況や症例報告3,4)がされているが,全国的ネットワークの構築には至っていない.今後は骨・軟部腫瘍の治療施設のOTが互いに議論できる場が必要であり,臨床,教育そして研究を支える基盤づくりが急務である.骨・軟部腫瘍による上肢切断例の多くが予定手術であり,術前からOTがかかわることが可能である.また手術に加えて,化学療法,放射線治療を組み合わせた治療を行うことがあるため,治療に伴う有害事象も考慮しながらかかわることが必要である.この点では,外傷性の切断例とはやや異なっているかもしれない.
今回は希な腫瘍から上肢切断に至った事例を紹介しつつ,作業療法実践を解説する.
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