増刊号 急性期における疾患別作業療法
第3章 急性期の運動器疾患の作業療法
6 人工股関節全置換術(THA)に対する作業療法の実際—後方アプローチ系に対する脱臼予防の観点から
川本 徹
1
,
中根 邦雄
2
Toru Kawamoto
1
,
Kunio Nakane
2
1総合大雄会病院リハビリテーションセンター
2総合大雄会病院人工関節センター
pp.891-895
発行日 2023年7月20日
Published Date 2023/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203473
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はじめに
人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:THA)とは,変形性股関節症による疼痛や関節可動域制限等を起因とし,ADLへの支障が顕著となった場合に行われる手術の一つである.変形性股関節症とは,股関節の単純X線画像から得られるパラメータとして,骨棘や軟骨下骨の骨硬化像,骨囊胞,関節裂隙狭小化を特徴とする疾患1)である(図 1a,b).
一般的な後方アプローチによるTHA後の合併症として,股関節の後方脱臼が挙げられ,過度な股関節の屈曲・内転・内旋の複合動作で発生しやすい.しかしながら,その肢位は更衣や入浴等の生活動作で容易にとりやすいため,術後は股関節脱臼予防の指導が行われている.一方で,患者は脱臼に対する漠然とした不安によって,自らに活動制限をかけてしまうことも少なくない.われわれOTが,術式により異なる脱臼のリスクを理解し,個別の生活習慣に合わせた介入を行うことで,患者も安心して退院することにつながる.
そこで本稿では,後方アプローチ系のTHAが施行された患者に対し,脱臼予防に特化した介入を行い,患者が活動の拡大へ至るよう支援する作業療法について述べる.
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