増刊号 急性期における疾患別作業療法
第1章 総論
5 自宅退院や社会参加を見据えた急性期からの作業療法—就労支援を含む
富永 雅子
1,2
Masako Tominaga
1,2
1中国労災病院 中央リハビリテーション部
2中国労災病院 治療就労両立支援センター
pp.797-802
発行日 2023年7月20日
Published Date 2023/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203456
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はじめに
急性期病院では入院日数の短縮化が推進されているが,入院患者の多くを占める65歳以上の高齢者の退院に関しては,病院側,患者・家族側,地域の受け皿,病院と在宅サービス間をつなぐシステム等の複数の要因が関係するため,在宅への移行が円滑に進まない場合も多い.また,退院前後では環境が大きく変化するため,障害を有した身体を生活環境に適応させることができず,退院後に何らかの生活機能障害を呈している場合も多いといわれている.そこで自宅生活への円滑な移行のために,PT,OT,STが他職種との連携を含めた退院支援プロセスに積極的に関与することが期待されている1).
診療報酬の改定等により病院の機能分化が進み,急性期から回復期へ転院するケースが多く,急性期のリハスタッフは自宅退院に向けた支援を行う機会がないと思われがちだが,実際には急性期から直接自宅退院するケースは少なくない.急性期病院のリハ患者を疾患別に分けて自宅退院率を調査した研究2)では,運動器81%,心大血管87%,脳血管58%,廃用56%であり,脳血管,廃用は運動器,心大血管に比べ自宅退院率が低かったと報告している.また,重回帰分析の結果,在院日数の予測因子として,運動器と廃用では介入時Barthel Index(BI),心大血管では退院時BIが検出されたとも報告しており,ADL能力は退院先を予測する因子として有用であることがうかがえる.
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