むつみ庵の日々・第12回【最終回】
ケアすることで,ケアされる
日髙 明
1
1NPO法人リライフむつみ庵
pp.1362
発行日 2022年12月15日
Published Date 2022/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203224
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事務所に入って来たスタッフの内田さんが,ぷりぷりしていました.聞くと,男性入居者のイガワさんが靴下を履くのを手伝おうとひざまずいていた内田さんの顔に向かって,イガワさんがわざとお尻を突き出してきたというのです.「も〜,私ばっかり……」と内田さんはこぼします.イガワさんは,他のスタッフにはこういうことはしません.陽気で他の人にも気配りをするタイプの方なのです.ですが,内田さんに対してだけ,ぞんざいな態度で接することがあります.
「内田さんには心を許しているところがあるんですかねぇ……」と私は言いました.普段のお2人のざっくばらんな会話を聞いていると,イガワさんにとって内田さんが気の置けない相手であることがうかがえます.少しくらい意地悪をしても許してくれると思えるような関係なのでしょう.内田さんもそこは承知していて,「うん,それは私も思ってんねん.信頼してくれてるんやったらしゃあないな〜って」と笑っていました.
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