提言
自動車運転評価と地域移動支援
外川 佑
1
Tasuku Sotokawa
1
1山形県立保健医療大学
pp.1024-1025
発行日 2022年9月15日
Published Date 2022/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203119
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どの立場で自動車運転評価の結果を分析するのか?
「どの検査がどのような結果であれば,この対象者は運転再開ができるのか.それとも,できないのか」.筆者が自動車運転評価に携わりはじめた当初は,そのような二元論に溺れていたように思う.実際の対象者は症状の程度や,置かれた環境や文脈的な背景もさまざまであり,グラデーションに富んでいる.たとえば,交通量の多い市街地を職業ドライバーとして運転する場合と,畑の様子を見に行くために田んぼ道を運転する場合では,求められる認知機能の程度が異なるのは容易に想像できるだろう.自動車運転は,このように「人」,「作業」,「環境」が相互に関連し合いながら作業遂行されている.
Marshall1)が提唱している運転の階層モデルにおいて,自動車運転能力(driving ability)は,神経心理検査のみならず,さまざまな構成要素(component)から成り立っていることが示されている.このこともあり,筆者は,神経心理検査の結果のみで自動車運転能力を判断しようとする試みについては慎重になるべきであるというスタンスでいる.実車評価が実施できる環境ではない,ドライビングシミュレータがない等の組織における環境的な理由が存在するために,自動車運転能力の評価を神経心理検査の結果のみに頼らざるを得ない場合は,その中で最善の意思決定をすることが妥当であろう.
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