- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
切断(amputation)とは,四肢の一部が切離された場合をいい1),先天性と後天性がある.切断原因として,上肢切断では労働災害や交通事故等,外傷によるものが約75%と大半を占め2),一方,下肢切断では労働災害や交通事故等,外傷によるものが34%,糖尿病,動脈硬化症,バージャー病等,血行障害によるものが37%2)と,上肢切断と下肢切断で異なる傾向がある.後天性による切断の場合は,いわゆる「運動器」と呼ばれる骨・関節・筋肉・靭帯等が,外傷や疾病により損傷し,切断術を施行せざる得ない状態を経て切離に至る.そのため,損傷部位である断端を含めた,全身の身体機能面の評価や治療が必要であることはいうまでもない.
今回のテーマである「運動器からみた切断の作業療法の実践」で大切なのは,①対象者を尊重しながら個人因子を把握し,②心身機能や身体構造に当たる損傷した部位の評価や治療はもちろん,③身体の動きや動作を基に,活動・参加を踏まえた必要な動作や活動を分析しながら捉え,④環境因子である欠損した四肢の機能を代償する義肢(義手・義足)等の知識を活用する.そして,これらを総合的に実施しながら,義肢に適応していく中でどのような活動を目指し,⑤どのような社会参加に至るのかという視点で,切断者の生活を包括的に捉え(図 1),介入することである.
本稿ではテーマ上,②に重点を置き,活動や参加を実現するために,義肢が操作できるための身体機能の獲得を中心に紹介する.切断という障害や義肢だからと特別視することなく,作業療法の対象となる「人」である切断者と,環境因子である「義肢」を活用して,どのような「活動」に着目し,生活全般を支援するかという視点での作業療法実践について考える機会としたい.
Copyright © 2022, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.