連載 作業療法を深める・第66回
医療における対話を促進するコーチング
出江 紳一
1
Shin-ichi Izumi
1
1東北大学大学院医工学研究科
pp.528-533
発行日 2022年6月15日
Published Date 2022/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202991
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はじめに
医療の現場では,さまざまなコミュニケーションが交わされる.患者やその家族と医療従事者との間あるいは医療従事者間で,情報(指示命令を含む),質問,提案,要望等が伝えられる.これらの伝達には目的があり,その目的に合った方法で伝えられることが大切である.
相手の目標達成に向けた主体的な行動変容を促進することが目的であれば,そこに対話的コミュニケーションであるコーチングの技術を活用することができる.コーチングの三原則である「双方向」,「個別対応」,「継続性」は,この目的と結びついた特性である.また,コーチングには,「気持ちよく自分の話ができる」,「新しい視点に気づく」,「自分ができることを新たに始め継続する」という機能がある1).すべての技術についていえることだが,コーチングも目的と機能に合致したかたちで使うことが肝要である.
本稿では,機能と紐づけながら,コーチングの基本的なスキルとして,「傾聴」,「承認」,「質問」を概説し,患者中心医療における対話の価値について私見を述べる.詳細は成書2〜4)を参照していただきたい.また,実際の医療面接や人材育成においては,コーチングだけではなく,ティーチングやカウンセリングも状況に応じて使われる必要があることを付記しておく.
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