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はじめに
スコットランドでは,2009年に「認知症の人々とケアラーのための権利憲章」を策定し,2006年に国連で採択された「障害者の権利に関する条約」(障害者権利条約)の人権基準に即した認知症支援を実施するための原則(PANEL原則)を示した.PANELとは,Participation(参加),Accountability(責任),Non-discrimination and Equality(非差別と平等),Empowerment(エンパワメント),Legality(法の支配)である.それ以降の認知症施策や指針の策定過程ではPANEL原則が守られている.これは権利ベースのアプローチ(rights-based approach:RBA),人権ベースのアプローチ(human rights-based approach:HBRA)と呼ばれ,国際開発援助の領域で1990年代後半ごろより提唱されるようになった国際的な人権に関する法体系の基準や原則を国際開発援助の計画や過程の中に取り入れようとする考え方と障害者権利条約が基になっている.
またPANEL原則に基づき,第一次(2010〜2012年),第二次(2013〜2016年),第三次(2017〜2020年)の認知症国家戦略を策定している.PANEL原則で認知症施策や指針の策定過程に「当事者参画」が不可欠な要素であることが示されているスコットランドでは,第三次認知症国家戦略の中に認知症の人の人権ベースのアプローチ(rights-based approach:RBA)として,“Connecting People Connecting Support(CPCS)”がつくられ,Allied Health Professions(AHPs)の役割が明記された1)(CPCSの詳細は本誌2018年9月号を参照).
AHPsは,スコットランドNHS(国民保健サービス)におけるリハビリテーションコーワーカーの組織であるが,その中には,OTの他にも,PT,ST,義肢装具士等が含まれる.第三次国家戦略でAHPsの役割がつくられる過程において,行政や地域,あるいは病院でリーダーシップを担ってきたOTの影響力が大きかったと2018年3月に現地のOTにインタビューをした際にうかがった(本誌2018年9月号を参照).そこで本稿では,CPCSづくりにかかわったOT 2名に,認知症の人や家族と共にOTがどのような取り組みを行ってきたかをうかがったので紹介する.
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