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はじめに—ある特別養護老人ホームでの経験から—
以前,筆者(宮脇)は,非常勤作業療法士として,特別養護老人ホームに月1回,1時間程度のゲームを主とした集団活動,いわゆるレクリエーションをおこなっていた.しかしその実情は,筆者が来所すると,すでに30〜50人程の車椅子に乗せられた入所者が,整然とホールに集合しており,筆者は,差し障りのない種目をおこない,レクリエーションが終われば,作業療法は終了というものであった.しかもそれが何年も続いたにもかかわらず,大部分の入所者の名前も知らずにいたのである.当然,職員とも関わる機会は無きに等しく,筆者が何者であるかさえ知らない職員も多かった.おそらく読者の中にも少なからず,筆者のような経験をされた方がいるかもしれない.この実情に対し筆者は,“これは作業療法ではない”と痛切に感じ,レクリエーションそのものは止めてしまった.そのかわり,毎回,職員に4〜5人の入所者を選んでもらい,筆者が作成したチェックシート(疾患をはじめ,心身の状態,ADL,介護状況など)に事前に記載してもらい,そのチェックシートをもとに入所者を評価し,問題点を明らかにして,今後の対応などを職員と検討するといった実施内容に変更した.その結果,職員に対して1人1人の入所者の心身状態を説明する機会は増え,実際のADL場面で介助指導など細かな対応を職員に指導することができるようになった.そのような経過を経て,現在では,入所者の生活の中で必要と考えられる個人,もしくは集団単位での有効な“作業活動”や“レクリエーション”を,職員と一緒に実施している.このような筆者の経験から,レクリエーションは,作業療法の作業活動の1つであることを改めて認識した次第である.
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