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はじめに
現代人の生活においてインターネットは,仕事,学業,趣味,家事等,生活の多様な側面に広がり,多くの人々が利用している.IT技術の急速な発展は,インターネットを利用する簡便さを向上し,パソコン,スマートフォン,タブレット等,多様な方法で幅広い年代に取り入れられるようになり,情報検索やオンラインゲーム,ソーシャルネットワーキング・サービス(以下,SNS)を介した相互的なコミュニケーションをとることも,日常生活ではごくあたり前のこととなった.
一方で,1990年代より,インターネットの過度の使用によって,日常生活の遂行,身体および精神的健康,社会生活に影響を及ぼす,いわゆる「インターネット依存(以下,ネット依存)」が世界的に社会問題化してきている.われわれが,厚生労働科学研究の一環として,2012年(平成24年)に全国約10万人の中高生に対して行った調査1)によると,男子生徒の6.2%,女子の9.8%の者にネット依存が強く疑われ,その数は約52万人と推計された.また別の厚生労働科学研究調査2)によると,2008〜2013年までの5年間に,成人でネット依存傾向にある者は1.5倍にも増大し,その推計値は420万とされる.
実際の臨床場面でも若年層の受診が多く,久里浜医療センター(以下,当院)の専門外来では,中高生が全体の50%,大学生を加えると全体の70%を占める.最も依存しているネットサービスはオンラインゲームであるが,最近スマートフォンのサービスを使用する者が増えてきている.ネット依存症者においては,学業,家庭内関係,健康等への影響が大きく,遅刻,欠席,成績低下が多くの者にみられ,不登校,留年,退学,転校も少なからず認められる.また,ネット使用について,親に対する暴言・暴力はほぼ全例にみられ,昼夜逆転,ひきこもり等もまれではない.さらに犯罪につながるケースも認められる.
合併精神障害を有する患者も一定の割合で認められ,ADHD,自閉症スペクトラム障害,社交不安等の合併頻度が高い.
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