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はじめに
発達障害はスペクトラムの概念であり,正常とか異常とかの境界線が曖昧である.発達障害と診断されていても,世の中で活躍している著名人もいる.スペクトラムの概念から考えて,発達の偏りが社会的に受け入れられて本人が適応している状態であれば,個性の範囲内としてとらえ,社会の一員として生活していけるようにすることが最終目標になる.
生理的にも発達的にも成長・発達途上にある幼児期に,家庭や幼児教育(保育園,幼稚園),幼児教育の場以外の集団生活で,同年代の仲間や大人からその個性を受け入れられるようにする作業療法対応のポイントについて,医療機関でかかわった対象児と養育者から教えていただいた筆者の経験から述べさせていただく.
発達障害は,主に自閉症スペクトラム障害(以下,ASD),注意欠如/多動性障害(以下,ADHD),学習障害(以下,LD)の3障害は脳機能の障害といわれ,見たり聞いたりしたことを理解し記憶する,過去の経験に照らし合わせて計画を立て遂行する,というような認知機能に偏りがあると考えられている.このような障害のある子どもの行動や精神状態に問題が発生する原因には,遺伝的な素因が大きく関係するといわれているが,いじめや虐待等の,発育している社会環境から生じるストレスが脳の働きに影響することもあるともいわれている1).
脳や中枢神経系は,痛みや温度,味,臭い,音や言葉,視覚,骨筋系等からの情報を受け取り,適切な指令を送って生命維持や人の行動を調整している.しかし,発達障害の症状は,受け取る情報の脳内処理の調整に何らかの問題が生じるため,生活面での認知機能の活用や発達過程に偏りが生じ,心身両面の発達遅滞として出現している.そのため発達障害児は,社会生活の場で何らかの問題が生じ,家庭生活の場でも不適応状態になってしまうために,幼児教育者や養育者に気づかれることが多い.
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