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Key Questions
Q1:緑内障患者は運転を控えるべきか?
Q2:対座法の視野検査はどうやるのか?
Q3:白内障患者は運転を控えるべきか?
眼疾患と運転適性
安全な運転には良好な視機能が必要である.眼をつぶった状態では安全に運転することは不可能である.問題はどの程度,視機能が障害されると安全な運転ができなくなるのかということである.いわゆる正常な視機能は,矯正視力が両眼とも1.2で,視野が耳側90度,鼻側60度,下側70度,上側60度程度見えることとされている.運転免許の取得基準を正常な視機能を有することとしてしまえば,実社会における視力や視野と運転の安全性の問題は解決してしまうが,軽度白内障の患者等,日常生活に不自由を感じていない多くの人が免許をもつことができなくなってしまう.
本邦における第一種普通自動車免許の視力の基準は,両眼の矯正視力が0.7以上,片眼の矯正視力が両眼ともに0.3以上であり,また1眼の矯正視力が0.3に満たない場合には,他眼の視野が150度以上で矯正視力が0.7以上であることとなっている.これはわかりやすく言い換えると,矯正視力が両眼とも0.3以上,両眼で見たときの矯正視力が0.7あるときは,視野がどれだけ狭窄していても,車の運転が法的に可能であるということである.また“片方の眼の矯正視力が0.3に満たない場合は他眼の視力が0.7以上で視野が150度以上”とは,1眼が失明していてももう片方の眼が正常であれば法的には車の運転に何の支障もないということである.視力0.7とは,通常のランドルト環を用いた視力検査でいえば,上から7番目のランドルト環の切れ目が見える程度の視力であり,くっきりものが見えるという感じではないだろう.われわれ眼科医からすると,この基準はやや緩いものと感じられるが,各国の基準と比較すると比較的厳しい基準である.たとえば,EUでは両眼での矯正視力が0.5以上で視野が120度以上,米国では同じく両眼での矯正視力が0.5以上で視野の基準はまちまちであるが,最大で140度である1).残念ながら現在のところ,視力や視野に関して免許の基準から交通事故を抑制することができるという明らかなエビデンスはない2).では,各眼疾患と交通事故の関係をみてみたいと思う.
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