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Key Questions
Q1:高齢者の自動車運転はどれくらい危険なのか?
Q2:高齢者の運転と事故の特徴は?
Q3:高齢運転者対策の現状と課題は?
はじめに
わが国では,人口の高齢化を上回るペースで高齢運転者が増加している.警察庁交通局1,2)によれば65歳以上の運転免許保有者は,2006年(平成18年)末には1,039万人で全免許保有者の13.1%を占めるに過ぎなかったが,10年後の2016年(平成28年)末には1,768万人に増加し,全体の21.5%を占めるまでになった.特に75歳以上の運転免許保有者数は,2006年末の258万人から2016年末には513万人へと倍増し,全体に占める割合も3.2%から6.2%に上昇している.また,2016年末における75歳以上の全人口に占める運転免許保有者の割合は約3割(30.3%,男性57.9%,女性12.8%)にとどまっているものの,いわゆる団塊の世代以下の年齢層ではもともと運転免許保有率が高く,特に女性の保有率が急上昇することから,今後も人口の高齢化を上回るペースで高齢運転者,特に75歳以上の高齢運転者が増え続けるものと予測される.
一方,わが国の交通事故による死者数は昭和40年代には年間1万6,000人を超えていたが,近年は減少を続けており,2016年の死者は3,904人と,1949年(昭和24年)以来67年ぶりに4,000人を下回った.しかし,死者の総数が減少する中で,65歳以上の高齢者が犠牲となる割合は年々上昇し,2016年には2,138人で54.8%を占めるまでになった.中でも歩行中の死者1,361人のうち1,003人(73.7%)を65歳以上の高齢者が占めており,その対策が喫緊の課題となっている.
一方,高齢運転者の増加に伴い,高齢運転者がかかわる死亡事故の割合も年々上昇し,2016年には65歳以上の高齢者が第一当事者(当該交通事故における過失が重い者)となった死亡事故件数が全体の28.3%を,75歳以上のそれが13.5%を占めるまでになった.これらは先に述べた全運転免許保有者に占める高齢者の割合をそれぞれ上回っており,高齢者が死亡事故を起こす確率が相対的に高いことを示している.ちなみに2016年中に75歳未満の運転者が第一当事者となった死亡事故件数は,免許保有者10万人当たり3.8件であったのに対して,75歳以上では8.9件と倍以上であった.
以上のように人口の高齢化は,歩行者として交通事故の犠牲となる高齢者が増加する一方で,運転者として加害者となる高齢者も増加するという,2つの課題をもたらしている.本稿では,主として後者を巡る課題について概説する.
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