増刊号 上肢・手の機能と作業療法—子どもから大人まで
第2章 上肢・手の実用的機能向上—各手技・手法の考え方と具体的実践
4 —ボバースコンセプト:小児—ボバース概念に基づく小児期の上肢・手へのアプローチ
辻 薫
1
Kaoru Tsuji
1
1大阪発達総合療育センター
pp.687-692
発行日 2017年7月20日
Published Date 2017/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200984
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療法士の臨床実践トレーニングモデルであるボバース概念
ボバース概念は,1951年に英国ロンドン西部脳性麻痺センターを創立したKarel BobathとBerta Bobath夫妻の名前に由来している.「患者さんから学び,患者さんが示す事実に従う」というKarelの医師としての信念があった.また,「対象者をよく観察し,問題の本質を分析し,新しい知見で解釈し少しでも良くなりそうな手段を試し,挑戦しては前に進み,そしてこの歩みを決して止めないでください,なぜなら私たちの仕事(ボバース概念)は,未完成だから」と,Bertaはセラピストのプロフェッショナルな姿勢を強調した.また,知識,技術,臨床応用のサイクルによる「考えるセラピスト」の養成を目的に,1958年より脳性麻痺児の全人的問題解決アプローチとして講習会を開催し,世界各国の小児リハに多大なる影響を及ぼした1).
日本では,脳性麻痺の早期治療(0歳から)を開始し,1970年に聖母整肢園の園長となった整形外科医 梶浦一郎と,Bobath夫妻が確立した「専門職卒後12週間講習会」を受講したPT紀伊克昌により,1973年から脳性麻痺基礎講習会が開始された2).聖母整肢園は,在宅療育,家庭療育を中心とした早期発見,早期療育を基本理念として,南大阪療育園,大阪発達総合療育センターへと名称および組織改変が行われ,療育形態を発展させた.また,講習会は「近代ボバース概念小児領域8週間基礎講習会(以下,小児ボバース講習会)」として毎年内容を更新し,40年以上にわたり継続している.
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