特集 神経生理学的アプローチの転換
ボバースコンセプトの変遷と今後―成人分野を中心に
大槻 利夫
1
Toshio Ohtsuki
1
1上伊那生協病院リハビリテーション課
pp.551-559
発行日 2011年7月15日
Published Date 2011/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101998
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はじめに
ボバース概念とは,1996年に世界各国の成人部門の国際インストラクターで組織されているInternational Bobath Instructors Training Association(IBITA)の年次総会において「中枢神経障害によって姿勢制御と運動機能に問題をもつ患者個々人の評価と治療のための問題解決アプローチ」と定義されている(IBITA,1996).このアプローチは1940年代初頭にナチスの迫害から逃れイギリスに亡命したボバース夫妻(理学療法士のベルタ=ボバースと小児神経科医のカレル=ボバース)により,理学療法の臨床実践をその時代の最新の神経生理学で説明していくという二人三脚的作業により始められた.最近諸家により「神経生理学的アプローチとしてのボバース概念はすでに新しいアプローチに取って代わられている過去のもの」という扱いをされているが,現在のボバース概念は創始者による実践と理論をコアに据え,最新の神経科学の知識を基盤に世界のリハビリテーションの潮流に沿った新しい治療理論を積極的に取り込み,患者の運動機能障害を具体的に解決する治療スキルを提案・実践しつつ発展し続けている.今回は誕生してから70年になろうとするアプローチの歴史的変遷を紹介し,現代そしてこれからのボバースアプローチについて述べてみたい.
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