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Key Questions
Q1:「教育」について考えることがなぜ必要か?
Q2:「教育」の歴史から紐解けるものは何か?
Q3:各養成施設の理念,教育目標からみえてくるものは何か?
はじめに
『作業療法白書2010』には,2010年(平成22年)4月現在,OT養成校数は182校であり,定員は7,000人を超え,その教育に携わる教員数は,同年3月現在,1,239人と記されている.それから約7年が経過し,2017年(平成29年)1月現在のOT養成校数は186校1)である.増え続けた養成校数も少し落ち着きをみせている.次は各養成校がこれまでのOT養成教育を丁寧に見直す時期がくるのだろうか.
わが国におけるOTの養成教育は,1963年(昭和38年),国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院開校に始まり,以来54年が経過しようとしている.理学療法士及び作業療法士法案について検討する席上にて,「理学療法士及び作業療法士について,急速に充実対策をすすめる」2)と政府は発言しており,多くのPTおよびOTが早く現場で活躍できることへの大きな期待がうかがえる.これは見方を変えると,当時は人材不足であったため,即戦力となるOTをとにかく早く輩出しなければならない時代であったと考えることができる.
現在8万人に手が届くOTが活躍する中,その教育現場ではさまざまな問題が指摘されている.本誌のこれまでの特集でも,臨床実習における多くの問題3〜10)が読み取れる.これらの問題を,臨床実習という学習方法単独の問題として取り上げるわけにはいかない.OT養成教育は「学内授業」と「臨床実習」の両翼により,優秀なOTを養成し輩出することを目指しているからである.
教育活動で重要なのは,教育を計画する際の羅針盤となる「教育目標」である.この教育目標の吟味は,良質なOTを養成するための戦略を考えるうえで必須となる.一方でよりよい教育をするには,実践者である教員自身の教育力の向上が重要であるのはいうまでもない.現在,作業療法教育に携わっている教員で,教育学等の専門的な知識をもって教員になった方は少ないのではないだろうか.その不足した知識を補うために各養成校では,Faculty Development(FD)を通して,教員の教育力向上に向けて努力している.
しかし,FDで教育そのものを考えることはあまりないのではないだろうか.筆者が大学時代に中学校の体育の教師を目指していたころ,教育原理の科目で,ルソーの『エミール』を読み教育について考察せよという課題を出されたことがかすかな記憶として残っている.また現在も職場の書架に3冊組の『エミール』が鎮座している.教育に対する思いをもつことは,教育する者にとってこの上ないエネルギーになるだろう.そこで本特集では,冒頭に本稿で「教育」という働きかけそのものについて取り上げ,「教える」ことの原点を皆さんと一緒に考えていきたい.その後は,教育目標の連鎖に配慮した卒前教育のカリキュラムデザイン,特に学内授業に関する取り組みや,臨床参加型実習に対する取り組みに関し,今まさに実践しているOT養成教育の具体的な実践例を報告していただくことになる.これらの実践報告がOT養成教育の今後のあり方についての議論をさらに進めるきっかけとなれば幸甚である.
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