Japanese
English
解説
中枢神経回路網の再構成
Reorganization of the CNS neuronal circuitry
川口 三郎
1
Saburo Kawaguchi
1
1京都大学医学部脳神経研究施設生理学部門
pp.47-57
発行日 1982年2月15日
Published Date 1982/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903518
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脳を構成する神経回路網の可塑性は学習,記憶,代償機能といった脳の高次機能の成立基盤である。脳の高次機能をはじめて生理学の研究対象にしたと云われるPavlovは条件反射の脳内機序として当初からニューロン間の結線の可塑性を想定していた。かつて大脳皮質の機能はどこも等価であり全体として機能するという機能等価説,全体機能説が広く信じられていた。今日では大脳皮質の機能局在は疑いのない事実として認められているが,脳の部分的損傷によって障害された機能が時間の経過と共に回復する現象は機能局在説にとって説明し難いことであった。なぜなら神経病理学は既に損傷されたニューロンの再生が起こらないことを明らかにしていたからである。この困難に対して,Huhling Jacksonの階層構造説すなわち1つの機能が重層的に担われており上部の階層が破壊されても下部の階層が抑制から解放されて障害された機能を代償するとか,機能代替説すなわち障害された部位の機能を障害されなかった他の部位が肩代わりするとの説明が出された。後者の説明は皮質の各領野はそれぞれ特有の機能を発揮しながら潜在的には他の領野の機能を担う能力があると考えるものである。また別の説明としてはSperryによる行動代替説とか,Luriaらによる再訓練説が出されている。
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