提言
フランクルからのメッセージ—あなたを待っている誰かがいて,あなたを待っている何かがある
畑田 早苗
1
Sanae Hatada
1
1土佐リハビリテーションカレッジ
pp.1254-1255
発行日 2016年11月15日
Published Date 2016/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200754
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私は,リハの学校を卒業し,精神科作業療法の道に進んだ.当時の同僚から,精神科で仕事をするのならこの本を読んでみるべきだと手渡された本がある.それは,実存分析の提唱者であるヴィクトール. E. フランクルの名著『夜と霧』であった.ユダヤ人であり精神科医でもあったフランクルが強制収容所からの奇跡の生還について人間の心理を記した名著で,戦後まもなく出版され,世界的なベストセラーとなった精神医学書である.原著のタイトルは「心理学者,強制収容所を体験する」だが,ナチス政権のユダヤ人迫害の命令により,ユダヤ人は,一家が一夜にして家族ごと神隠しにあったように連れ去られ,霧のように跡形もなく消えたということから,旧版の訳者である霜山徳爾氏がこの邦題にしたといわれている.フランクルは,民族浄化の目的でつくられたホロコーストの舞台を精神科医の視点で冷静に観察,分析し,被収容者の体と心に起こった出来事を記録した.フランクルは,この著書の中で過酷な状況下で死んでいった人,生き延びた人,その違いは何にあったのかについて記している.しかし本書の特徴的なところは,そういった過酷な状況における人間の心理を書きつつも,最終的には,「人には誰しも生きる意味があり,その意味のために生きなければならない」と読者を勇気づけているところである.
今回は,この『夜と霧』を基にOTが求められる役割について自分の考えをまとめてみたい.
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