あなたにとって作業療法とは何ですか?・第22回
あなたにとって作業療法とは何ですか?
岸本 光夫
1
1重症児・者福祉医療施設 ソレイユ川崎
pp.1203
発行日 2016年10月15日
Published Date 2016/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200744
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何とかする仕事
私の作業療法は,相変わらず垢抜けない.いつも理論的で計画的でありたいと願いつつ,決してそのようには進められず,行き当たりばったりの仕事人生だった.私にとってラッキーだったことは,この仕事の専門性と職域の曖昧さであった.しかし曖昧さゆえに,具体的に役に立つことを求められる厳しい現実がいつもそこにあった.気がつけば私にとっての作業療法は,対象児・者の「困った」を「何とかする」仕事になっていた.治療技術も知識も乏しく役に立てないから,椅子やおもちゃをつくって「何とかする」.対象児・者の思いに応えるために,使えるものは何でも使って「何とかする」.これが,私の作業療法魂を培った背景であった.しかし正直「何ともならなかった」ことは多く,「何とかする」思いが空回りをして,対象児・者を悲しませたつらい思い出もたくさんある.だからこそ,そこで学んだ経験はとても大きな財産であり,作業療法によって対象児・者を励ますことの意味を繰り返し考えさせられ,「何とかなるよ」と優しく語りかけることもできるようになったのだと思う.
縁あって今春から似合わない組織人になった.若いスタッフのために私が役に立てることは,そこにある資源と作業を使って創造的に対象児・者のために,「何とかする」仕事を観てもらうことだと思う.
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