増刊号 認知症と作業療法
第3章 認知症の作業療法の今後
2 セクターを超えたアプローチ
岡田 誠
1,2,3
,
原田 博一
1
,
田中 克明
3,4
,
徳田 雄人
2,3,5
,
井庭 崇
6
Makoto Okada
1,2,3
,
Hirokazu Harada
1
,
Katsuaki Tanaka
3,4
,
Taketo Tokuda
2,3,5
,
Takashi Iba
6
1株式会社富士通研究所
2国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
3認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ
4コクヨS & T株式会社
5NPO法人認知症フレンドシップクラブ
6慶應義塾大学総合政策学部
pp.762-767
発行日 2015年6月20日
Published Date 2015/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200290
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はじめに
認知症高齢者の人数は,2025年には約700万人と推定されている1).認知症は日本にとって大きなインパクトをもつ社会的な課題であり,企業を含むすべてのセクターの人々が関係者である.
たとえば,認知症本人へのアンケート2)によれば,認知症になってから「買い物に行く機会が減った」,「電車やバスなどの利用が減った」という方はそれぞれ67%を超える.なぜ減ったのですかと尋ねると,50%以上の人が,「駅構内で迷ったり,バス停を探したりすることが難しい」,「券売機や自動改札等の機械操作が難しい」という.
これを,「認知症だから」というひと言で片づけてよいのかという思いが,本稿の原点となる.駅や店の構造,機械の操作のしやすさへの配慮など,生活のあらゆるシーンで,認知症にやさしい温かなデザイン(ウォームデザイン)が求められている.認知症にやさしいという価値観は,認知症の人のためだけではない.それは年齢を重ねた人にとっても温かなデザインとなるだろう.交通・流通・金融・住宅・生活消費材にかかわる企業・組織が,セクターや業種の枠組みを超え,知恵を共有し育てていく取り組みが求められている.
本稿では,作業療法という専門の外から,セクターの枠組みを超えたアプローチの意味に焦点を当てて述べていきたい.
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