特集 価格とコストの地域格差
医療費の地域加算価格導入の再検討―第三セクター鉄道との比較を通じて
平野 創
1
,
平野 琢
1
1一橋大学大学院商学研究科
pp.745-750
発行日 2007年9月1日
Published Date 2007/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101012
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本稿では,医療費の地域加算価格導入が都市部の赤字経営に悩む病院に与える影響を検討する.本稿前半部では,地域間のコスト差の価格への安易な転嫁は,赤字を計上する病院にとって本質的な問題解決とはならない可能性を指摘する.なぜなら,都市部に赤字病院が多い原因はコスト格差よりも,地域間の医業収入の格差に起因すると考えられるからである.
本稿後半部では,医療機関と類似した状況下にある他産業の事業体(第三セクター鉄道)を考察し,医療機関への経営改善のインプリケーション導出を試みる.第三セクター鉄道は,稼働率低下(乗客減少)に伴う収入の減少に悩まされていたが,老人や学生といった交通弱者のために容易には廃止できないというジレンマに陥っていた.こうした,公共の福祉と収益性の間のジレンマという点で,患者(顧客)が少ないからといって社会厚生上容易には撤退できない病院と第三セクター鉄道は共通点があると考えられる.
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