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はじめに
「認知症のある方(高齢者)を地域で支える街づくり」というテーマをいただきました.“地域”や“街づくり”というキーワードがさまざまな分野で盛んに使われていますが,定義も,具体的なゴールも不明瞭のままです.既存の資源で解決しきれない課題を抱えたときに,「結局,“街づくり”よね」などと言っているだけの場面にもよく遭遇します.課題が切迫していない場合,それでもいいかもしれませんが,認知症の方に必要な“街づくり”に関しては,待ったなしですべての住民の具体的な行動が求められているといっても過言ではありません.幸い全国各地でさまざまな具体的な取り組みが始まっています.しかし,私たち専門職の中で,「“地域”で“街づくり”に参加しています」と明言できる方は決して多くありません.あまりにテーマが壮大すぎて“街づくり”のイメージをもてなかったり,“街づくり”は自分以外の役割だと考えていたり,大切だとは思いつつも具体的な行動の第一歩を踏み出せなかったり…….
精神科病院で働いている私たちは,専門職と地域住民としての視点を同時にもちつつ,昭和40年代の先輩方の障害者支援活動を引き継ぎ,認知症の課題を重ねて考え,20年近く具体的に活動してきました.地域によって認知症のある方を取り巻く状況はまったく違いますし,私たちのスタートラインは精神障害者支援でありますので,参考にしていただけるか難しいところです.ただ,より閉鎖的であった精神科病院の中の専門職でも“街づくり”に参画できるようになったプロセスが,1人でも多くのOTの方が,専門職として,また地域の一(いち)住民として,“街づくり”に具体的に参画するきっかけになればと思い,「どう考えて活動しているか」,「具体的にどう行動しているか」ということを中心に,愛南町での活動を紹介します.
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