増刊号 認知症と作業療法
第2章 時期(重症度)別にみる認知症の作業療法の実際
13 —施設③—グループホームで認知症の方の生活を支えるための作業療法士の役割
田中 千惠
1
Chie Tanaka
1
1グループホームながぬま
pp.715-719
発行日 2015年6月20日
Published Date 2015/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200281
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
筆者は,約10年前に認知症高齢者グループホームを開設し,現在,3カ所でグループホームを運営している.認知症の症状のため,在宅生活が困難になり,入居する利用者に,OTとして個々の利用者の状態を評価し支援の方向性を決め,職員と共にチームでケアを行うことで,グループホームでの生活を受け入れてもらえるように取り組んでいる.
長倉1)は,認知症高齢者のリハの目的は,①情緒の安定,②残存する機能・能力の維持・向上,③生活環境の調整,④安定した日常生活の維持であると述べているが,これは,グループホームにおいて認知症高齢者が生活するうえでも目的とすることである.グループホームは1ユニット9人までの少人数の共同生活であることから,利用者一人ひとりの状態を把握しやすく,在宅生活に近い環境の中で,即支援につなげやすいサービスであると考える.
しかし,利用者と職員がなじみの関係をつくりやすい反面,利用者に周辺症状(BPSD)が出現すると,利用者との物理的な距離が短いため,職員の介護負担が増す場合もある.職員が利用者にとっての人的環境であることを考慮しながら,筆者は,BPSDが出現している利用者を支援するとともに,職員へも支援する必要があると考える.
Aさんはグループホームに入居して7年になるが,入居初期に帰宅欲求と攻撃的言動が,入居5年目に急激な食事量・水分量の低下がみられた.この入居初期の帰宅欲求と攻撃的言動がみられた時期と,入居5年目の食事量・水分量の低下がみられた時期に行った支援についてまとめたい.
Copyright © 2015, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.