増刊号 認知症と作業療法
第2章 時期(重症度)別にみる認知症の作業療法の実際
4 もの忘れ外来における自分らしい生活の支援
西岡 洋平
1
Youhei Nishioka
1
1一般財団法人 河田病院
pp.662-667
発行日 2015年6月20日
Published Date 2015/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200272
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
想像してみてほしい.あなたやあなたの大切な家族が軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)や軽度認知症になったことを.そのとき,どのように生活したいだろうか.
わが国における認知症患者数は,高齢化に伴いさらに増加が見込まれており,認知症対策は急務の課題である.当院では2006年(平成18年)から早期診断・早期治療として,もの忘れ外来を開始した.そして,OTは外来作業療法と訪問作業療法でMCIや軽度認知症と診断されたクライエントに支援を行ってきた.
もの忘れ外来における支援の目的は,MCIや認知症という疾病がありながらも,クライエントとその家族が住み慣れた環境で,自分らしく生活できることである.そのためには,疾病性への対応と同時に,事例性(その人が生きてきた時代,大切にしてきたこと,役割等,他の人に取って代わることのできないこと)への対応を十分に考慮1)し,支援することが重要である.そして,具体的な支援としては,①認知症の行動・心理症状(BPSD)の予防・改善,②クライエントが自分らしく生活できるための作業ニーズの評価と介入,③家族自身が自ら考えてクライアントを支えられるように支援すること,の3つの支援が大切であると考えられる.
では,実際にOTはMCIや軽度認知症と診断されたクライエントをいかに支援することができるのだろうか.
以下,もの忘れ外来において筆者が担当した事例のOT介入経過を紹介し,上記①〜③の3つの支援について考察を述べていく.
Copyright © 2015, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.