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はじめに
認知症高齢者の数は増加の一途をたどり,高齢者の約15%は認知症を発症していると推計されている1).認知症は,本人のみならず家族介護者の健康まで損なう恐れがある.さらに,認知症関連の社会保障費も年々増加しており社会的問題となっている.これらのことから,認知症予防への取り組みは急務となり,認知症発症と活動種目の関連,運動や食事との関連等,数多くの研究がなされている2).今や世界中が認知症予防に着目している時代である.近年,介護予防の観点から,健康高齢者を対象とした作業療法の効果に関する研究報告も増えてきた.Well Elderly Study3,4)では,生産的で意味ある作業を育むことが,自立性を最大限に高め,生活機能を拡大し,人の健康維持に役立つという視点5)から,作業に関する教育,情報収集および実践の過程が健康高齢者の生活満足度やQOLを向上させた.わが国でも,健康高齢者を対象として,人間作業モデルの構成要素である10の概念の講義と演習を実施した介入によって健康感QOLの向上が認められた6).さらに,活動の種類が効果を左右するのではなく,参加者がその活動を望むか否かが健康に関与するという報告7)や本人が新たに挑戦したいと思っている作業を遂行することが認知機能向上とQOL向上をもたらせたという報告8)がある.また,趣味のサークルや地域活動に参加していないことが,認知症発症のリスクにつながるという大規模調査の結果もある9).
このように,作業に焦点を当てて介入することが健康寿命延伸につながり,認知症発症を予防する可能性が高まってきた.今回,筆者らが実施してきた認知症予防事業への取り組みと作業に焦点を当てた認知症予防教室を紹介し,認知症予防事業に盛り込むべきいくつかの援助方法を提案する.
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