講座 集団の力の活かし方・第4回
精神科領域での「集団」の力の活かし方—精神科ナイトケアを利用する事例を通じて
渡邉 忠義
1
Tadayoshi Watanabe
1
1医療法人安積保養園附属あさかホスピタル
pp.1150-1156
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200025
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
私たちは産声を上げた瞬間から家族という集団の中に存在している.それどころか,少し遡れば胎生期も未来の母親や父親と暮らしを共にしている集団といえる.
集団を意識しはじめる時期は,自己と他者を比較し,その相違や優劣を感じるようになる幼少期であると考えられる.しかし集団の中に存在していることを自覚できない誕生の瞬間も,家族や出産を支える多くの医療関係者等,新しい命を社会に送り出す頼もしい集団がそこには存在している.
生物の発生過程に目をやると,細胞は分裂や吸収を繰り返し集団化することで,個としての体を成す.バクテリアやウイルス等の原生動物も,より高度な分裂を繰り返し,種を保存するための集団化を確立してきた.最初の脊椎動物である魚類もほとんどの種は食,住,行動を共にしている.チンパンジーの社会では孤立している者は死に向かうと考えられ,集団社会のルールや序列の順守が種を保存している.
生物の存在を思うに,ヒトも集団の中で生き活かされ,集団の中に身を置きながらバランスよく個を保つことが求められる生物とみることができる.一見,ヒトはそれぞれの個がもつ共通項や共通因子によって,凝集化,集団化し生活や社会を形づくっているように考えがちであるが,他の生物と同様,集団という生存圏の中にあって存在が保障されている.私たちは集団がもつ,または集団から与えられる多くの価値や意義を十分に認識し,集団を育てなければならない.
Copyright © 2014, "MIWA-SHOTEN Ltd.," All rights reserved.