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年が明け,年度末に向けて準備する時期になってまいりました(すみません.この原稿を書いている時期ですので,発刊の時期とずれており,1月のことです).この時期になると学校教員をしている私の周囲はいっそう慌しくなってきます.そうです……国家試験が近づいているからです.ついこの前まで学生だった方はもちろん,卒業して少し年月が経っていらっしゃる方も,この時期のことはつらく苦しい思い出として,心に残っていらっしゃるのではないでしょうか.まるで出口のないトンネルに入ったかのような大きな不安の中,ただひたすら勉強する…….今まさに,その時期です.ですから,この時期になると学生たちはひっきりなしに私のもとに訪れて,「勉強しても勉強しても成績が伸びないのはどうして?」,「どんなふうに勉強したらいいの?」,「不安で心配で眠れません」等々……心の中を吐露していきます.こういった学生たちのフォローをするにも,私はOTでよかったなあ,と常々思っています.学生の気持ちに寄り添って,具体的な勉強の方法や生活について指導・助言する,学生への支援はまさしくOTの支援そのものだからです.
そして,私の周りが慌しくなるのは学生たちの動向だけではなく,もう一つ大きな原因があります.それは,就園,就学を迎える子どもがいるお母様たちの悩みが具体的になっていき,不安が極限に達するからです.「うちの子は普通学級か,特別支援学級どちらがいいでしょうか?」,「小学校の先生に発達障害と診断されたことを言わないほうがいいでしょうか?」,「給食が食べられないと思うのですがどうしましょうか?」,「お友だちに変わっていると言われ,いじめられたりしないでしょうか?」等々…….お母様たちの悩みは大きなものから細かいものまで尽きることがありません.そりゃ,そうですよね.発達障害がなくても,子どもが就園,就学を迎えるというのは親にとっては心配なことばかりです.それに発達障害が加わると……その心中は計り知れないものがあることは容易に想像がつきます.そこで今回は,そういったお母様の就学前の心配から始まったアスペルガー障害のM君へのアプローチについてお話しします.
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